簡易シナリオ集:魂を削るもの:「第5章 絶望の振動」
【導入】
12/31日のデイリーロンドン紙朝刊に私事広告が掲載されます。それはデッドエンド老人からのもので、ハンドレッド・コークスを呼び出すための記事です。これはPC全員が見ることができます。
『我が最後の弟子ハンドレッド・コークスに告ぐ。これは命をかけた復讐である。新年と共に、絶望が倫敦を覆うように調節した。これは君の卑劣な行為に対する復讐である』
そして同日、PCのもとには暗号化された手紙が送られてきます。そこには、今自分はハンドレッド・コークスに対して復讐をせねばならないということ、そしてもしもコークスと行動を共にしているのであれば、その『左手』に気をつけろ、という内容が書かれています。具体的にはコークスの左手は、別名を『削り取るもの』という名のパンクガジェットであり、『魂を強制的に奪う装置』なのだと告発しています。これは先日の老人の小屋捜しでコークスとPCが行動を共にしているということが老人に伝わったことからの配慮です。名前が明らかになったので、これ以降はリンクリストに登録することができます。
【展開】
朝刊が出て少しすると、新聞を持ってコークスがPCの前に出現します。コークスは酷く悩んでいるような姿を見せます。
もしもPCが手紙のことをコークスに言った場合には、コークスはおおげさに驚いた顔をして、「狂人のいうことを真に受けるのですか?」といいます。そして彼は老人がどんなに自分勝手な男であり、この倫敦に住む者にとって危機的であるかなどについて熱心に語ります。そして、その狂人を捕らえるための準備は完了したのだけども、人手が足りないので、引き続き一緒に動いて欲しいと告げます。
老人からの手紙のことを何も告げない場合には、コークスは「老人の居場所がわかりました。出来れば彼を保護するのを手伝っていただきたいのです」と慇懃に頼みます。
コークスの依頼を断ることも、その依頼に乗ることもPCには自由です。しかし、コークスは、先日の爆発事故が起きたあの場所に、老人が何度も足を運んでいることが目撃されていると言います。また、独自の調査では、彼が極めて危険な装置(そう、『絶望共振装置』です)を使い、先日PCの一人に対して行ったような攻撃を、倫敦市民全員に行おうとしているのだと熱心に語ります。そして、新聞に老人自身が書いたように、大晦日の夜にその装置が発動するのではないかと言います。
コークスと共に、またはコークスとは別行動だとしても、PCは先日の事故の起きた場所に足を向けるはずです。そこには未だ取り壊されないままの鉄骨が冷たく空を見つめて建っています。そして、そこでは老人が装置を発動させようと待ち構えているのです。
老人は年の変わり目の瞬間に、予告通り倫敦目がけて、『絶望』状態の固有振動を発生させる予定です。これは『熱い魂を持つ者』全てを瞬時に『絶望』状態に陥れます。これは、老人の側に、ハンドレッド・コークスに自分自身と同じ状態をもたらそうという錯乱した野望があるからです(それによって他の人たちに迷惑が及ぶことは錯乱した彼には些細なことのようです)。その意味ではコークスの言うことにも一理あります。
コークスの姿を見ると、老人は「私の情熱を、この冷えた心に赤い火を返せ、この冷え切った心の持ち主め!」と罵倒します。その姿を見ると、コークスは「まだそんなお元気ではないですか」と冷酷な口調で応えます。「あなたの燃えるような情熱は、この左手が喰いましたけどね」と冷笑します。続けて「その装置を発動したとしても、この左手がありますから私には関係ありません。しかもここには生きの良い生贄が何人もいる」と言ってPCに触れようとします。
【結末】
PCがこのやりとりの場にいた場合には、ハンドレッド・コークスと戦闘を行うことができます。コークスはその際、彼は自分の左手をPCに接触させることで『熱い魂』を1ポイントずつ減少させ、義手に宿すことができます。
老人は内ポケットから奇妙な装置を取り出し、先日PCに対して行った『絶望』の攻撃を、コークスに対して行います。しかし、コークスには効果がありません。これは、彼が『熱い魂を持つキャラクターではない』からです。
もしも何らかの手段で彼の左手を破壊することが出来た場合、老人は『絶望』状態を脱し、自らの計画を破棄します。0時までにコークスの左腕が破壊されない場合には、倫敦近隣の『熱い魂を持つ者』は、全て『絶望』状態に陥ります。しかしその瞬間、コークスにまるで変化が起きない状況に老人は狼狽し、心神喪失状態になってしまいます(セッション中は回復しません)。コークスはそれを確認すると、老人を殺害しようと試みます。
もしも事前にPCが警官を配置しているなどの状況を作るなどの非常に不利な状況になった場合には、彼は迷うことなく逃げ出します。結局最終的には正常に戻ったか、または心神喪失、または殺害された老人が残ります。
【備考】
コークスは自らの左手を用いて、強制的に老人を『絶望』させたのです。しかし、デッドエンド老人は、『絶望』した状態ままで復讐を果たそうとしています。その復讐は、コークスを『絶望』させて同じ苦しみを与えようというものです。しかし、それは不可能です。コークス自身が「熱い魂」を持つ者ではないためです。
コークスはデッドエンド老人を亡き者にしようとしています。しかし殺害未遂と『絶望』させられたこと、弟子に裏切られたことなどが重なって老人は錯乱しています。
老人が正気に戻った場合、今後はコークスを追うことになるでしょう。それ以外の結末の場合、PCがコークスを追うかどうかはマスターに委ねられています。デッドエンド老人の残した膨大な発明品の遺産は、ウィリアム・コックスに引き継がれます。彼はPCに協力的です。また、今後何年にも渡って執拗にコークスによって狙われ続けます。
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